誰もが一度ぐらいは、「イメージング」や「イメージトレーニング」という言葉を耳にしたことはあるだろう。
プロサッカー選手はじめ、トップレベルのアスリートも、イメージの力を活用すると夢が実現したり、パフォーマンスが上がることは心理学の世界でも証明されている。
ところが、イメージトレーニングを実際に行っても、その効果を十分に享受できているアスリートやチームは少数だ。
なぜなら、「イメージング」や「イメージトレーニング」は誰もが取り組みやすい反面、 多くのアスリートは正しくない知識でトレーニングを行ったり、効果を実感できず、途中で止めてしまうことも多いからだ。
イメージングやイメージトレーニングについての理解を深め、効果の出せるポイントや方法を抑えて継続的に実践していくことで、 その効果の素晴らしさや現状が変化していくことに驚くことになるだろう。 イメージの力を最大限に引き出していくことは、それほど夢への扉を開ける大きな手掛かりになるのだ。 ぜひ、この記事をきっかけにして、本格的なイメージングに取り組んでみよう!

アスリートとして、夢や目標について当てはまるものはいくつありますか?
☑ 叶えたい夢や目標がある ・高い目標を持とう!と言われるけど、
現実離れしすぎて叶えられそうにない。
☑ 自分やチームの目標があるけれど、掛け声だけになっている
☑ 夢や目標がだんだん義務的な感覚になってきている
☑ 夢や目標を実現している人たちは何をやったのか知りたい!
☑ どうせなら、夢や目標は真剣に楽しく実現したい!
一端のアスリートであれば、「夢」や「目標」といった類のものは持っているだろう。 けれど、上記のような課題を感じているアスリートは非常に多い。
それは、夢や目標が細部までありあり描き切れていなかったり、夢や目標を絶対に実現したいと思う「理由」が曖昧で、心の底から湧き出てくる大きなエネルギーのようなものが足りなかったり、いくら「この夢、実現しよう!」と思っても、すぐに忘れたり、夢や目標を思い出す仕掛けや習慣がなかったり、ということが要因として考えらる。
では、夢や目標を実現するために「イメージング」をどのように活用していけばよいのだろうか。
イメージングとイメージトレーニング
では、まずはじめに、多くの人が聞いたことがある「イメージトレーニング」や「イメージング」とはなにかを理解することからはじめよう。
イメージすることに関する言葉というのは、洋の東西問わず、世の中にあふれている。 「想像する」「創造する」「空想」「妄想」「幻想」「イメージ」「イメージング」「イメージトレーニング」など。
日本語の意味の違いは、「現実味」の違いと言える。「想像」は頭の中だけで考えることで、非現実的な事柄には使われにくい。 「空想」は現実にはあり得ないことや、現実と関係ないことを思いめぐらすこと。 「妄想」は病的に抱く誤った判断や確信のこと。根拠もなくあれこれ想像すること。 「幻想」とは、現実にないことをあるかのように思い浮かべること。
では、「イメージ・トレーニング」「イメージング」とはなにか。
普通の空想(妄想)と「イメージすること」の違いは、 本当に起きていることとしてイメージするという点だ。 言いかえればイメージした世界をイメージの中で体験することで、実現したい未来を先取りしたり、実際に試合などでプレーしたときにも、スムーズな動きができるようになる。
また、「イメージング」と「イメージトレーニング」も定義が異なる。
イメージングとは、 簡単にいうと、夢や目標を実現し、成功した場面をイメージすること。 これをルーティンとして行うことで、実現可能性が大きく向上する。 成功を手にした場面や感情にフォーカスし喜んでいる自分、感動している自分など 「ある時、ある場面」をありありとイメージすることで、 目標の実現ばかりでなく、モチベーションを維持する効果につながる。チームなら、目指す場所を選手全員でビジュアルととして同じ絵を描けることで、チーム強化にもつながる。
一方、イメージトレーニングとは、「○○になりたい」という目標があったとして、 そこに至るまでにどんなスモールゴールを突破する必要があるのか、それらの過程の中でどのようなハードルや困難を体験し、その時、どのような対応をするかなど、夢や目標を実現するまでの過程の出来事を想定し、事前にイメージをしていくトレーニングのこと。 言い換えると、今を出発点に成功までのプロセスを具体的にイメージして準備し、本番さながらにイメージの中でリハーサルしていくトレーニングと言える。
イメージングとイメージ・トレーニングの違いは理解できただろか。
それでは、今回の記事で、「イメージング」について解説していこう。 「イメージ・トレーニング」についての解説は、次回の記事を参考にしてほしい。

イメージングの習慣(ルーティン)化が、サッカー選手にどのような利益をもたらすか?
イメージングで成長できる3つの力
サッカー選手がイメージングを習慣化することで3つの力の成長を見込める
➊ 夢の実現力向上 ➋実力&発揮力向上 ➌マインドセット
- イメージングをルーティン化することは、夢や目標を忘れない仕組みとなり、実現確率が向上する。(何回、夢や目標が実現した状態をイメージしたかが、実現確率と比例する)
- イメージングのルーティン化で、「なぜ何のために日々を過ごしているか」モチベーションの維持ができる。
- 高い意欲の持続で、自分軸がぶれず、日々のトレーニングの質が向上し、結果として実力(競技力)も向上する。
- 繰り返しのイメージングにより、夢や目標の実現に向け、必要な情報を自動的にキャッチできるようになる。
- 繰り返しのイメージングにより、試合でも普段通りの実力を発揮できる心理状態となり、試合でのパフォーマンスも良くなる。
- 繰り返しイメージングすることで、自分自身のセルフイメージが上がる。(自己肯定感・自己効力感)
- 夢や目標を実現した際の「自分」にふさわしいマインドセットができる。(信念、自分への信頼、高い当たり前基準、考え方など)。
イメージングで効果が出る理由
すでに解説しているように、「イメージング」は未来の実現したい夢や理想を、五感を伴ってありありと想像しきることが重要だ。 夢は具体的であればあるほど、実現の可能性も高くなる。 では、なぜ、イメージングを行うことが効果的なのか。 心理学や脳科学の観点から解説しよう。
脳には時間の概念がないので、過去も現在も未来も区別できない。
「あの出来事は今から〇年前の出来事だった」と私たちの意識の中では、時間の概念が明確にあるが、 脳には時間という概念がないので、どの出来事も、脳の記憶の中では「いま現在」起こっていることと同義になる。
実際に起こったことも、視覚化したイメージを視ているときも、同じ脳部位が働いている。ポジティブなイメージングを繰り返すと、脳に「これはいま起こっていることだ」と勘違いさせることができる。脳にとっては、「これが今の私なんだ」というセルフイメージにもつながる。ポジティブなイメージングは自分の自信や自己肯定感にもつながる。
イメージングをすることで、心がワクワク状態となり、脳が最も活発に働く状態になる。
脳が最も活発に働く状態は、ドーパミンなどのホルモン物質が脳内に産出されている時だ。脳内物質であるドーパミンは、放出されると全ての脳領域に行き渡る仕組みになっている。その他のホルモン物質は、生物学上、全ての脳領域に行き渡らない。つまり、ドーパミン物質により脳のパフォーマンスが最大になる
脳は大きく分けると「快」「不快」のどちらかの状態しかない。 どちらも人間が生きる上で欠かせない機能で、「不快」がひどくなると「うつ病」になり、「快」の状態は最も脳全体が活発な状態となり、脳と身体の連携も高まり、パフォーマンスも上がるのだ。
「快」の状態はアスリートのパフォーマンスも上がる。いわゆる「ゾーンに入っている」時の脳は「快」の状態だ。ゾーンに入った精神状態になるには、身体面の準備はもちろん、脳も「快」状態を意図的に作り出すことで、最大限のパフォーマンス発揮へつながるのだ。
イメージングをルーティン化することは、脳を日常的に「快」の状態にするクセをつくることなので、ゾーンに入りやすい脳の状態を自分で作り上げることになる。
一つ注意しなければならないのは、未来を想像する際、ついつ癖でネガティブな場面も想像してしまうこともあるが、よく覚えておいてほしいのは、ネガティブな場面も繰り返し想像すると、それも現実化しやすくなるので気をつけよう。
なぜ、イメージングをやっても効果を実感できないか
サッカー選手やアスリートに話を聞くと、「イメージ・トレーニング」を行っているという選手がいる。ところが、よくよく話を聞くと、間違った我流のやり方で、効果につながっていないアスリートも多い。なぜ、効果を実感できないのか。よくあるパターンを羅列してみよう。
イメージングの際の環境が悪い
イメージングに取り組み始めた最初は、慣れるまでイメージングの最中に邪魔されない静かで集中できる環境づくりをしよう。その状態でイメージングすることに慣れると、どんな場所でもイメージングできるようになる。
より鮮明にイメージしようと力み過ぎて、交感神経が優位に働いてしまい、リラックスできていない
イメージングの際は、リラックスして行うことで高い効果を出せる。
「もっと具体的にイメージしよう!」「もっとちゃんと自分目線でイメージしよう」「もっと五感も使ってイメージしていこう」などと、イメージすることそのものに力んでしまうと、張り詰めた状態の時と同じように交感神経が優位に働き出し、イメージングの内容が脳内に入り込んでいかない。
三人称視点でばかりイメージしている
イメージングは、主に二つの視点で行うことをおススメする。
一つは、「自分の目線で想像」して、まるで今がその時かのように疑似体験できる方法。
もう一つは、「俯瞰目線や他人目線」で想像をしていること。
効果が出やすいのは、自分目線でイメージする「一人称視点」だ。
臨場感を伴ったイメージングができていない
イメージングは、ただただ理想の未来を想像すればいいか、と言ったら、そうではない。
感情や気持ちを込められていない
イメージングは、いかにリアリティを出して想像できるかどうか、が重要だ。
現実世界では、何かしらの出来事が起これば、感情も湧き出てくる。 態度や姿勢にも表れるし、表情にも表れる。どこまでリアリティに拘ったイメージングができるかどうかを大切にしてほしい。
例)ドラえもんの絵をイメージだけで描く → 正しいドラえもんの絵と比較する、という実験をしてみてほしい。ドラえもんは、誰もが知るキャラクター。想像できない人はいないぐらいだろう。けれど、実際にドラえもんを描いてみると、正確に描き切れた人はあまりいない。
つまり、まるで今が現実かのように、徹底してありありイメージしてみるのはどうだろうか。
イメージしている場面を、本気で実現たいと思っていない
イメージしている場面に、しっくり感を持てないままイメージングしている
強く念じたり、祈るような気持ちが交じり、「欲しい」「したい」などの欠乏感を持ちながらイメージングしている
プロのメンタル・コーチが教える、3ステップですぐできるイメージングのやり方
1.心から実現したい場面(シーン)を設定する。
まずは、実際にイメージングできるように、「何をイメージするか」を決めよう。
現時点では、あいまいな状態が多くても、心の底から「これを何が何でも本当に実現したいだ!」と心から思えるワクワクする夢や目標を設定しよう
2.環境づくり(リラックス)
初めてイメージングに取り組む人やまだ慣れていない人は、「集中できる環境」をつくろう。
例えば、自分しかいない空間、雑音が気にならない場所の選択、集中できそうな落ち着いたヒーリングミュージックなどのBGMを流しながら、などだ。
3.実現したい未来や目標の場面を今、実際に起きていて体験している意識でイメージ。
イメージングの際の最大のコツは、“すでにそうなっているかのように”ありありと想像すること。
すでにそれを実現し、手に入れている状態を、まるで今がその現実であるかのうのようにイメージしよう。
五感(視覚・聴覚・触覚・感情など)を働かせながら、「いつ、誰が、どこで、どんなことをしてるか?」を場面設定してから、自分のパフォーマンスや発している声、音量、なども具体的にありありと思い描き、出てきた気持ち・感情も感じとりながら、まるで今がその時であるかのごとく想像すること。

イメージングで効果を出すポイント
- リラックスと集中
すでに解説したように、イメージング初心者の場合は、まず、リラックスでき、雑音が気にならず、集中できる環境をつくろう - 一人称イメージと三人称イメージ
イメージする際、2パターンの目線でイメージをすることができる。一つは、「一人称イメージ」と呼んでいる、『自分目線』でのイメージ。これは、超一流の体操選手・内村航平選手が行っている。自分がプレーしている時、周囲の景色は次々と変化していくが、その情景を自分の目線でイメージングをする。優勝し、カップを掲げている場面ならば、カップを掲げている自分の目線から見える風景や景色、カップの形や質感などをイメージ。そのようなイメージが一人称のイメージングだ。
二つ目は「三人称パターン」のイメージング。つまり「俯瞰目線」「鳥の目目線」のことだ。第三者として優勝カップを掲げている自分をイメージすること。
どちらのイメージ・パターンもイメージングするのが良いが、自分目線をよりたくさんイメージングすることがおススメ。 - 臨場感を持たせてイメージングする
臨場感を持たせてイメージングするにはコツがある。 それはまず「いつ、どこで、誰が、なにを、どのように」という場面の設定を明確にすること。その上で、イメージの中でその場面に入りこんでいき、自分目線で細部までありありと想像する。
→ 元陸上競技・オリンピアンの為末大さんは現役時代、自分がどんなシーンで涙を流すのか、までイメージングしていたそうだ。 - イメージ中に感じる気持ち・感情をモニタリングし、「快」を感じる状態か確認する
「うんうん。これこれ」「これだ!」「しっくりくる~!」「間違いない」など、確信めいた感覚を感じる状態が身体の奥底から感じられている感覚かどうかを、イメージングの最中に、自分を客観視するようにモニタリングしてみよう! - 執着を手放す
視覚化をしながら強く念じたり、祈るような気持ちになると逆効果。
「欲しい」「したい」という思いは欠乏感の表れなので、望むこととは反対のエネルギーを発してしまう。「どうしても叶えたい」という執着があるとリラックスできない。リラックスできないと潜在意識がうまく働かなくなる。 - 大切なのは、「継続する」こと
イメージの反復により、願いが叶った姿が潜在意識に刻み込まれれば、脳はその光景を当たり前で自然なこととして認識される。
夢や目標の実現確率をさらに高める4つの「+チャレンジ」
◆ビジュアルイメージを音声や映像に吹き込み、よりリアルなイメージング
実現した夢や目標が鮮明にイメージできるほど設定できたら、それをいつでも想い描けるように、ビジュアルを「言葉による表現」で音声に吹き込んだり、イメージ映像が造れれば、それを活用し、イメージングがしやすくなる。
◆実現イメージを一瞬で思い描けるビジョン・マップ
上記同様、ありありと夢や目標のイメージが持てている場合は、それを画像で表現し、模造紙などに張り付けたものを部屋に飾ったり、写真に撮って、スマホやパソコンの待ち受け画面にすることで、「それを見ればいつでも自分の夢を一目で確認できる」状態が作れる。
◆チームや仲間同士で、夢や目標を発表し相互支援する発表会を定期的に開催
夢を発表する機会を持つことで、「ちゃんとした発表をしないと」という意識が働き、より夢を周囲に表現する力を磨くことができる。たいていの夢や目標は一人では実現できない。協力者や応援してくれる人たちの存在が必要だ。その最も身近な応援者が、チームメンバーだったら、心強い。
さらには、チームの中に「お互いの夢を相互に応援しあえる文化」を持つことは、強いチーム作りにもつながる。例えば、週に一度、「チームメンバー○○さんの夢を応援するために、自分ができることをする日」を仕組みとして作れば、夢実現の可能性も高まりばかりか、メンバー同士の関係性も向上できる。
本格的にイメージング・スキルを磨いて、夢を現実にしたい! と本気で考えている25歳までのサッカー選手、アスリートの方、 メンタルコーチのサポートを受け、一緒に世界を目指しませんか?
